起立性調節障害

神経系は脳脊髄神経(動物神経系)と自律神経系(植物神経系)とに分けられ、脳脊髄神経系は思考、記憶、運動、感覚などに関与し、自律神経系は自分の意志とは関係なく働いている心臓、内臓諸器官の調整に関与しています。その中で、自律神経は交感神経と副交感神経に分類されます。起きているときには交感神経が心臓を活発に動かし、反対に寝ているときには副交感神経がゆっくりと心臓を動かしています。交感神経と副交感神経は相反して働き、そのバランスで体がうまく調和されています。
 寝ている状態から起き上がると静脈内の圧の感じる部分が反応し、下半身を中心に静脈が収縮して、重力で血液が下半身にたまって脳に供給される血液の量が少なくなる状態を防ぎ、
立ちくらみを防いでいるのも交感神経の働きです。自律神経の働きがスムーズでない状態が起立性調節障害です。起立性調節障害を持つ子どもは血管を収縮させる力が弱いため、起立すると下半身に血液が溜まり、脳などに血液が十分供給されず、立ちくらみや脳貧血などの症状がでます。特に起床時には副交感神経から交感神経への切り替えのバランスが重要となりますが、この病気の子では夜の眠りから朝目覚めたときに、副交感神経から交感神経への切り替えがゆっくりで、午前中いっぱい副交感神経が支配している状態が続くことになります。朝に体の調子が悪く、午後になるにしたがって調子が良くなってきますので、午前中は学校へ行けないという状況になります。朝起きられず遅刻する。午前中はぼんやりしていて授業についていけません。しかし、「学校へ行きたくない」ではなくて「学校へ行けない」のです。
 この病気は小学校の高学年から高校生にかけての
思春期前後に起こりやすく、女子に多く、春から夏にかけて起こりやすいとされています。まじめで、一生懸命にやる子どもに多いとも言われます。体を動かさず、冷暖房が完備した快適な環境が自律神経の発達を阻害している原因の1つと考えられています。
 起立性調節障害は起立や座位からの
起立直後に血圧が低下することが多いのですが(起立直後性低血圧)、起立直後は無症状で起立後数分以上してから気分不良、動悸、顔面蒼白などの症状が出るタイプ(遷延性起立性低血圧)もあります。後者では朝礼の途中で倒れるなどの症状が出ます。発作前に頻脈や血圧低下といった前兆が現れることが多いとされています。
 起立性調節障害の症状は
@朝なかなか起きられない、A朝に調子が悪く(しんどい、頭痛、腹痛など)昼ごろから良くなる、B立ちくらみを良く起こすなどです。午前中に調子が悪く、夕方からは調子が良くなり、夜遅くまで起きている子が多く、また思春期前後の子どもに多いことから、登校拒否と間違えられる子供もおります。サボりたいのではなくて学校へ行けないのです。朝が眠たいのは子供の常ですし、高校生ぐらいになると多少サボりたい気持ちもあると思いますが、朝起きられないのは起立性調節障害という病気です。本人のしんどさを理解してあげてください。この病気は子どもの成長とともに一旦は症状が強く出るようになりますが、身長の伸びが止まる頃からは徐々に改善してくる病気です。それまでは本人や周囲が理解して、あせらず気長に体調を整える努力が必要です。ストレスで症状が悪化しますのでストレスを取り除く方法を考えたり、軽度の運動を続ける、夜更かしや朝寝坊の生活習慣の改善を行う、朝早く起きて学校に行くまでに時間をかけて体調を整えるなども治療法ですが、薬で治すこともできます。朝、起きる時に血圧を調節する薬を飲むことで起床時の血圧低下を防ぎ、朝の調子を改善するという治療です。有効な場合に、一定期間だけお薬を服用することが自信にもなり、すぐに薬を中止できうまく行くことがあります。薬がすぐに中止できなくても思春期の終わり頃には自律神経の発達も良くなりますので、薬は不要になります。ただ、基本は周囲がこの病気のことを理解し、適切な精神的サポートを早期から行うことです。症状出現早期に小児科専門医を受診し、この病気の情報を入手し、子どもに早期からの精神的サポートを与えられれば軽症で経過することが考えられます。子どもを理解してあげてください。薬は補助的な手段です。
 診断は症状からの診断になり、器質的な病気を否定した上で、いくつかの症状がそろった場合に診断することになります。

起立性調節障害の診断基準

 大症状
  A) 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
  B) 立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
  C) 入浴時、あるいはいやなことを見聞きすると、気持ちが悪くなる
  D) 少し動くと、動悸あるいは息切れがする
  E) 朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い

 小症状 
  1  顔色が青白い
  2  食欲不振
  3  臍仙痛(強い腹痛)をときどき訴える
  4  倦怠あるいは疲れやすい
  5  頭痛をしばしば訴える
  6  乗り物に酔いやすい
  7  起立試験で脈圧狭小16mmHg以上
  8  起立試験で収縮期血圧低下21mmHg以上
  9  起立試験で脈拍数増加21回/1分間以上

判定は大症状1および小症状3、大症状2および小症状1、大症状3以上の場合で器質的疾患を除外できれば起立性調節障害とします。