肝炎について

 肝臓に障害を与えるものにはウイルス、細菌、毒素、肝臓の細胞内に蓄積する脂肪(脂肪肝)、糖(糖原病)などがあります。

 ただ、肝臓は生体肝移植のように肝臓の一部を他人に与えても特に問題とならないくらい予備能力がありますし、再生力の強い臓器です。多少の障害が生じても、障害となった原因をなくしてやれば回復します。非常に激烈な肝炎(劇症肝炎)や持続する肝炎(慢性肝炎)以外は自然回復を待てばよいと考えます。

1、肝炎ウイルスとは

 A肝炎ウイルス、B肝炎ウイルス、C肝炎ウイルス、D肝炎ウイルス、E肝炎ウイルスがあります。この内、A型とE型は経口(水や食物を介して)感染します。B型、C型、D型は血液(輸血や血液の付着した針などを介して)感染します。肝炎ウイルスという名前はついていませんがサイトメガロウイルス、EBウイルスなど肝炎を生じやすいウイルスがあります。

2、慢性になりやすいウイルス

 キャリア(carrier、運ぶ人)といわれる、ほぼ一生涯肝臓に中にウイルスを持つ人がいます。こういった状況を作り、問題となるのはB型とC型肝炎ウイルスです。乳幼児ではサイトメガロウイルス、EBウイルスなども慢性肝炎をおこしますが数年以内に治まります。

3、キャリアになぜなるのか

 B型やC肝炎ウイルスは抵抗力が弱い乳幼児に感染した場合やウイルスが変化して排除されなくなった場合に肝臓の中にすみつきます。そして、一旦すみつくと肝臓の中から出て行かなくて、その人と一生共存します。キャリアといっても一生肝炎をおこさず天寿を全うする人も多いのですが、一部の人は慢性肝炎、肝硬変、肝癌といった経過をとる人もおります。
 B型肝炎ウイルスでは小学校入学頃まで(特に赤ちゃんの場合)は免疫力(ウイルスを排除する力)が弱いため、ウイルスを排除できず肝細胞内に一生涯ウイルスが存在する状態(キャリア)になります。しかし、それ以上の年齢ではキャリアになることは非常に稀です。
 C型肝炎ウイルスはウイルスを排除する免疫力から逃れる能力が強い(ウイルスが変化する)ため、子供のみならず成人になってからの感染でもキャリアになることがあります。

3、キャリアにならないために

 これらのウイルスは血液を介して感染します。キャリアの母から子、キャリアの父から子、感染した血液の輸血、汚染された針などの回し打ちなどが原因です。
 予防のためには針の再使用の中止、検査された血液を輸血に使うことです。キャリアの母から子、キャリアの父から子の感染に関してはB型肝炎ウイルスの場合はワクチンを使ってほぼ完全に予防できます。
 C型肝炎ウイルスの場合はワクチンによる予防が現時点では出来ません。予防は出来ませんが、最も感染率の高いキャリアの母から子への感染率が5〜10%ですので、感染する危険性はあまり高くはありません。

4、B型肝炎ウイルスの感染予防方法

 B型肝炎ウイルスの予防はHBIGB型肝炎ウイルスに対する抵抗力)とワクチンによってほぼ100%の予防が出来ます。赤ちゃんに抵抗力をHBIGによって与えて、その後ワクチンによって赤ちゃん自身が抵抗力を作るようにする方法です。母から子の予防の場合は健保が適応され無料になりますが、父から子の予防の場合は有料になります。
 母から子、父から子への感染予防は赤ちゃんが出生してすぐから行う必要のある場合が多く、妊娠中から説明を受けて理解しておくことが必要です。 詳しいことは小児科専門医にお尋ねください。
 親子が安心して接し、遊ぶことは親にとっても子供にとっても非常に重要です。母と子の間のみならず父と子の間でもワクチンによる予防をお勧めします。

5、キャリアになってしまった

 ウイルスを完全に排除する薬はまだありません。インターフェロンもB型肝炎ウイルスを排除することは不可能です。C型肝炎ウイルスでは免疫力がウイルスを排除する状況になっている時に使用して排除できる人は30%です。
 しかし、肝炎を鎮静させる薬はありますし、子どもでは肝硬変などにはまずなりません。ただ、キャリアのお子さんでは元気であっても年に1〜2回の肝機能検査をお勧めします。肝炎発症の早い時期からの治療は特に有効です。

1)食事について

 食事に制限は全くありません。バランスよく食べてください。

2)運動について

 運動の制限もありません。肝機能が多少悪くてもクラブ活動なども大丈夫です。

3)他人への感染は

 日常生活の中で、他人へ感染させる心配はありません。幼稚園や学校では感染させません。大丈夫です。ただ、前述しましたように母と子、父と子など特殊な場合は感染させる可能性はありますが、ワクチンの予防を行えばこれも大丈夫です。