イオン飲料水と子ども

体の表面などから失われる水分量(不感蒸泄量)や1日尿量は1Kg体重あたり成人に比べ乳児で2.5〜3倍、小学生で1.5倍であり、子どもでは水分必要量は成人に比べ多く必要とします。子どもは活発に動きますので汗もかきやすいですし、風邪などで発熱することも多く、さらに水分必要量が増すことになります。つまり子どもでは水分摂取量が少なくなると脱水になりやすいのです。特に自分で積極的に水分摂取が出来ない乳幼児は脱水状態になりやすいといえます。
 脱水症例は唇が乾いたり、尿量が減少するなどの軽症例がほとんどですが、重症例では意識混濁、痙攣、ショック状態などを引き起こし死亡にいたることもあり、
脱水症を予防することは重要です。
 失われた水分や塩分を補給する方法のうち、経口摂取が不可能な特殊な場合では点滴が必要ですが、点滴は痛いですし、病院に行く必要があり、出来れば避けたい方法です。
水分の経口摂取が可能な場合、飲み物としてはぬるめのお茶やお白湯で良いのですが、これらには塩分は含まれておりませんので、これらのみでは下痢や嘔吐、汗で失われた塩分の補給は出来ません。乳幼児用のイオン飲料水はそういった意味で、水分と塩分が入っていて、下痢の悪化を防いで水分の吸収が良いように低浸透圧に調節され、塩分の吸収も良くなるように糖分が添加されています(ナトリウムはブドウ糖とともに小腸の細胞から吸収される:ブドウ糖との共輸送)。スポーツ飲料や果汁は子どもの脱水治療の飲料としては浸透圧が高く、塩分のバランスが適しているとはいえません。
 ただ、子ども、特に乳幼児の水分補給に適している
イオン飲料水は嘔吐下痢、発熱などでの脱水症に予防や軽度の脱水症の治療に用いれば非常に有用ですが、日常の生活や入浴後などに使用する必要はありません。お白湯やお茶で十分であり、イオン飲料水はあくまで病気のときに使用する飲料です。子どもにとって味覚感覚を育てていく大事なときであり、甘味への嗜好が強いときにお茶代わりに飲むことで、甘味嗜好が習慣化する可能性が指摘されています。糖質が含まれていますので多く飲めば肥満の原因となりますし、虫歯の原因ともなります。
 
イオン飲料水のダラダラ飲みによる小児での虫歯の発生が問題となってきています。虫歯の3大原因は糖、弱い歯の質、虫歯菌とされ、糖は摂り過ぎないようにし、歯の質の弱さにはフッ素を塗って歯を強くさせます。虫歯菌に対しては歯磨きをして虫歯菌の巣食う歯垢を取り除くという予防策が必要です。
 食事をする毎に目に見えないレベルで歯の表面は溶けています(脱灰)が、食べていない間に唾液の緩衝作用で口内が酸性から中性に戻りますので、食事中に溶けた歯に唾液中のカルシウムやリンが再度取り込まれ、元の歯の状態に戻ります(再石灰化)。溶けている時間が戻ろうとしている時間より短ければ虫歯にはなりませんが、溶けている時間のほうが長いと虫歯になります。
イオン飲料水をダラダラ飲むというのは、長時間口腔内に糖分が存在し、歯が溶けている時間が長いということを意味しますので、虫歯が出来やすくなります。
 また、口腔内のpH5.4以下では歯のエナメル質の脱灰が起こり虫歯になりやすいといわれておりますが、イオン飲料水(一部はpH5.5に調節しているものもある)やスポーツドリンク、果汁、乳酸菌飲料、コーラなどはpH3〜4と酸性で脱灰が起こりやすいpHです。
夜寝る前や夜中に飲ませるとこの傾向が助長されます。

対策として
1、イオン飲料の使用は
嘔吐や下痢などの病気や極端に汗をかいたときなどに限り用いる
2、嘔吐や下痢で使用しても症状が軽快すれば中止し、
その後はお茶を飲ませる。
3、イオン飲料水を水の代わりに使用しない。
入浴後は必要であれば白湯やお茶を飲ませる。
4、寝る前には歯を磨く。寝る前に飲ませる飲料はお茶にする。
5、大きな子の場合は
ペットボトルを持ち歩く習慣を止め、ペットボトルを利用する場合はお茶か水にする。運動で汗をかくときはイオン飲料水を薄めて飲み、運動後はお茶か水を飲む。