和歌山県の小児の脳炎・脳症
――平成6年から4年間の調査――

脳炎、脳症とは脳が炎症や特殊な物質によって傷害され、意識がなくなり後遺症を残す可能性が高い病気です。原因が多彩で、しかも重症、急死が多く、根本的な治療はありません。脳炎・脳症はこわい病気ですがその実態や発生頻度は良くわかっていませんでした。そこで、和歌山県の全ての病院小児科を対象とする小児の脳炎・脳症の調査を平成6年から4年間で行いました。

結果(下に表を示します)

4年間で58例の脳炎・脳症の発症がありました。年齢は生後1か月から15歳までで、20歳の1例は特殊な事情で小児科を受診した例でする。3歳未満が過半数の30例(51.7%)を占めております。季節的には12月〜2月の冬期に30例が集中しています。
原因が明らかなのはインフルエンザ13例、ロタウイルス6例、サルモネラ4例、風疹2例と大腸菌、マイコプラズマ、麻疹、アデノウイルス、HHV-6各1例でした。インフルエンザが流行した冬は脳炎・脳症が多く発症しています。
 転帰は
死亡12例、後遺症18例(重症7例、中等症5例、軽症6例)、特に問題は生じなかった(軽快)28例でした。死亡例は冬期に集中しています。

臨床経過

 発熱などの出現から神経症状(けいれんや意識障害)出現までの日数をみますと、発熱と同じ日(第1病日)に19例、翌日(第2病日)18例、第3病日6例、第4病日5例に出現し、神経症状出現は発熱と同じ日か翌日が多く、重症化の予測は困難でした。
 インフルエンザワクチン接種歴は不明例を除く全員にありませんでした。

小児科医の考え方

脳炎・脳症は発症が急速であり、また治療に難渋します。そのため、脳炎・脳症ではその発症予防が重要であると考えます。ワクチンは100%効果のあるものではありませんし、副作用もないとはいえません。しかし、病気の予防には現時点ではワクチンしかなく、脳炎・脳症など重症化する病気には特にワクチン接種をお勧めします。特に脳炎・脳症の罹患率が高い乳幼児や重症化しやすい基礎疾患を有する児には積極的なワクチン接種が重要と考えています。

  和歌山県での4年間の脳炎・脳症

  発症日

年齢

原因

神経症状出現まで

  転帰

1994年 3月

  5歳

同定できず

   

死亡

      

  

同定できず

死亡

      

  

風疹

後遺症なし

      

 10

同定できず

後遺症、重症

      

 10

同定できず

後遺症なし

      

  

風疹

後遺症なし

      

  

同定できず

後遺症、軽症

    12

  0.1

同定できず

後遺症なし

      

  

同定できず

後遺症なし

1995年 1月

  

同定できず

死亡

      

 14

同定できず

死亡

      

  

インフルエンザ

後遺症なし

      

  0.9

同定できず

死亡

      

  

インフルエンザ

後遺症、重症

      

  

同定できず

後遺症なし

      

  

同定できず

後遺症なし

      

  

同定できず

後遺症なし

    10

  

同定できず

後遺症なし

    12

  

同定できず

後遺症、中等症

      

  

同定できず

後遺症、中等症

1996年 1月

  

同定できず

後遺症、重症

      

  

同定できず

死亡

      

 15

麻疹

後遺症なし

      

 15

サルモネラ

後遺症なし

      

 

インフルエンザ

後遺症、軽症

      

 

同定できず

後遺症なし

      

 

大腸菌(O-165)

後遺症、重症

    11

 

同定できず

後遺症、軽症

    12

 

インフルエンザ

後遺症、軽症

1997年 1月

 

ロタウイルス

後遺症、軽症

      

  0.8

ロタウイルス

死亡

      

 20

同定できず

死亡

      

 

マイコプラズマ

後遺症なし

      

  .9

同定できず

死亡

      

 

同定できず