流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

 耳の下(耳下腺)とあごの下(顎下腺)にある左右の唾液腺(唾液を作る所)が腫れて、顔の下部が丸みを帯びる病気です。耳の下にある耳下腺が主に腫れますので、この病名となっています。唾液腺が腫れる時に痛みが出ます。下顎の関節が耳下腺の近くにありますので、食べる時(開口時)に下顎の関節が動いて腫れた耳下腺に当たり、痛みを訴えることで病気に気づくのが一般的です。唾液腺の腫脹が特徴ですが、小学校高学年以降の男性では睾丸が腫脹することもあります。唾液腺の腫脹は両側の耳下腺腫脹が特徴的ですが、片側のみ、顎下腺のみ、1つの唾液腺のみなど色々で、左右の耳下腺と顎下腺の4か所が腫れることは多くはありません。同時に腫れることが多いのですが、1つの唾液腺の腫脹後数日してから他の唾液腺が腫脹することもあります。唾液腺の腫脹は出現後48時間頃がピークとなり1〜2週間続きます腫れている間は他人に感染させるとされ、登校・登園は禁止です。発熱はないことが多く、あっても軽度の場合がほとんどです。
 感染しても
唾液腺が全く腫脹しない子も30%ほど存在します。特に2歳以下の年少児では唾液腺が腫れない率が高く、腫脹しても軽度であることが多いとされています。
 原因はムンプスウイルスというウイルスによる感染症で、感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は16〜18日です。

1、合併症

1)髄膜炎

唾液腺腫脹の数日後に発熱、嘔吐、強い頭痛で発症します。背中から髄液を採取して、髄液の異状の有無で診断しますが、検査をすれば約半数の髄液に異常が認められるとされています。治療が必要なほどの強度の頭痛などの髄膜炎の症状は数%です。耳下腺腫脹の3日以内に出現することが多く、5〜7日で自然に改善し、後遺症は残しません。

2)睾丸炎

小さな子どもでは生じませんが、思春期が出現する10歳以降で増加し、思春期以降では20〜30%の男性の睾丸が腫脹し、強烈な痛みを伴います。睾丸の腫脹は片側であることが多く、不妊の原因となることは稀とされています。女性の場合は数%で卵巣炎が生じます。

3)膵炎

膵臓(すいぞう)にも異状が生じやすく、唾液腺腫脹の数日後から発熱、腹痛、嘔吐が出現します。数%に生じるとされますが、軽症が多く、1週間程度で治ります。

4)難聴

2万人に1人程度に難聴も生じ、通常は片側性です。効果的な治療法が無く難治性です。

2、予防

有料ですが、ワクチン接種で予防可能です。特に小学校高学年までかからなかった場合に、この年齢以降の男性に感染すると睾丸炎発生の可能性が高くなることを考慮して考えて下さい。

3、鑑別を要する疾患

コクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルスなどムンプスウイルス以外のウイルス感染症でも耳下腺は腫れることがあります。流行性耳下腺炎に過去に感染していても、再度感染して耳下腺がごく軽度ですが腫れることが稀にあるといわれています。
 
反復性耳下腺炎:口腔内の菌が耳下腺内に入って炎症を起こして片側の耳下腺が腫脹し、痛みを訴えます。細菌感染を起こしやすい構造の耳下腺を持つ子どもがおり、繰り返して耳下腺の腫脹がおこります。

4、治療

原因であるムンプスウイルスに対する有効な治療方法はありません。痛みが強い場合やその他の強い症状があればこれを軽減する治療を行います。開口で痛みを訴え、食べれなくなりますので、硬くなくて噛まなくてすむような食べ物や飲み物を用意してあげて下さい。唾液の分泌を促進するような酸味(すっぱい物)の強い食物は避けて下さい。