先天性股関節脱臼

先天性股関節脱臼は生まれた時にすでに脱臼が完成している場合は少なく、脱臼しやすい状態で生まれてきて、新生児期に股関節の取り扱いが不良のため、だんだんと脱臼が進行し、股関節脱臼になってしまう場合がほとんどとされています。
 
新生時期での下肢を伸した状態が脱臼をおこしやすい状態とされており、1960年代までは股関節と膝が無理矢理伸された状態でオムツをぐるぐる巻にする巻オムツが一般的であったため、先天性股関節脱臼が非常に多く認められました。しかし、1972年に京都市で始まった巻オムツの中止と赤ちゃんの股を開いた格好で抱っこすことを心がけるなどの先天性股関節脱臼予防法が全国に広がった1975年以降からは発生率が劇的に減少しました。下肢を伸した格好にすると全ての赤ちゃんが脱臼するわけでありませんが、もともと脱臼しやすい傾向にある赤ちゃんが下肢を無理矢理伸された格好にされ続けると先天性股関節脱臼となるとされています。赤ちゃんを裸にして仰向けに寝かせると、膝を曲げ、股を開いてカエルのような格好になります。股関節を開き、股関節と膝関節を曲げた状態が自然であり、下肢はアルファベットのMの字の形になります。このスタイルが赤ちゃんにとっていちばん無理のない、自然な姿勢で、股関節にとっても脱臼しにくい格好です。赤ちゃんはもともと関節がゆるいので、股関節もはずれやすく、本来カエルのように曲がっている足を、無理に真っすぐにさせようとしたり、この姿勢を妨げるような形のオムツや衣類をつけることで、股関節の発達がうまくいかず脱臼してしまいます。関節は赤ちゃんが自分の意志のままに自由に動かせる状態にしておいてあげるのが良く、股関節のことだけを考えればオムツもあてずに裸で育てるのが一番良いのです(非現実的ですが)。下肢は曲げることにも伸ばすことにも自由である必要があります。
 症状は赤ちゃんのオシメを替えるときに
股が開きにくくてオシメの交換がしにくかったり、おむつを換えるときに股関節で音(クリック)がするような感触があるなどで気づかれたり、生後1か月や4か月の乳児健診で指摘される場合が多いのですが、
1)ひざを曲げた状態で
股を広げると股関節にクリッという音がする感触がある。これは股関節がはずれたり、はまったりするときに出る音の可能性があります。
2)両足を曲げて、ひざが外側を向くように広げてみると、
開きが悪い
3)両足をそろえると、太ももやおしりの深いシワの数が左右で違う。左右の足の長さも違う。
などがあります。
1、発生頻度の高い原因

1)妊娠中での子宮内の赤ちゃんの姿勢異常が指摘されており、骨盤位分娩で出生した児に多いことが明らかになっています。
2)出生後に下肢を持続的に伸展する状態が繰り返されると脱臼しやすくなります。下肢を伸ばした状態を強制的に続けると、股関節を曲げる力が、股関節脱臼を引き起こす力に変換してしまいます。三角オムツや巻オムツをしたり、厚着、横抱きなどをおこなうと、股関節は強制的に伸展位に保持されます。
赤ちゃんが自由に下肢の運動ができる状態にしておくとが先天性股関節脱臼予防には重要です。
3)女子に発生率が高い(男子の5〜6倍)ことや、動物にホルモンを投与する実験などの結果から性ホルモンが発生に関与していることが知られています。
2、予防法
 関節は赤ちゃんが自分の意志のままに自由に動かせる状態にしておいてあげるのが良ということです。正しいオムツとその当て方が脱臼の予防に欠かせません。現在市販されている紙オムツは問題ありませんが、腰の部分のテープをきつく閉めすぎず、
足の運動が自由にできるようにして下さい。布オムツも股に当てる股オムツ、抱っこも足の間に手を入れるようして下さい。ただ、足の間に手を入れる抱っこの方法は、抱っこされる人に当たっている方の下肢は圧迫され自由な動きが制限される可能性がありますのでいつも同じ方向の抱っこでは問題が起こる可能性があります。ズボンなどは下肢の動きを制限しない物を選び、小さくて下肢の動きを制限する可能性のあるものは用いないで下さい。
 赤ちゃんを抱っこする場合は、抱っこする人と赤ちゃんとがお互いが向き合うようにして、赤ちゃんの膝が曲がるようにして、下肢を抱っこする人の左右になるようにすると、赤ちゃんの下肢は自然な形をとり、ある程度自由な運動が可能になります。
抱っこする人の胸と赤ちゃんの胸を合わせ、赤ちゃんの股を支えて、膝も股も屈曲しており、股関節が自由に動いて自然な開排位になる抱っこ法が抱っこの基本です。赤ちゃんの背中が抱っこする人に向いてても、下肢が曲がり、自由に動ければかまいませんが、赤ちゃんを横にして抱くと、下肢の動きが制限されるので横抱きは出来るだけ避けるべきです。
 新生児・乳児期にオムツや抱っこの仕方などの正しい取り扱いをすることで、先天性股関節脱臼の多くは予防が可能です。治療は専用のバンドを下肢に1、2カ月着けます。これは痛みも苦痛もなく脱臼を元に治す働きがあり、このバンドでほとんどは治ってしまいますが、だめな場合には入院や手術が必要な場合もあります。放置されたり、治療が困難だったりすると、将来的に変形性関節症へ発展して、成人後に股関節に痛みを訴えるようになります。